ミレミレミシレドラ♪
この美しい旋律は、これまで特に音楽に興味をもっていなかったという人にも聞き覚えがあるかもしれません。学校の音楽室から聞こえてきたこのなんとも言えない繊細な曲に思わず足を止めて聞き入ってしまった方もいるのではないでしょうか。
この曲は1810年の作品です。ベートーヴェンといえば、20代の頃から難聴となり、30代の頃からはほとんど耳が聞こえず、40代では全く耳が聞こえていなかったというのは有名な話です。そんなベートーヴェンが40歳の時の作品で、プロポーズの曲だと言われています。
相手は上流貴族のテレーゼという名の18歳のお嬢さんでした。何も好んで22歳の歳の差を選んだわけではなく、テレーゼのお姉さんの婚約者である友人からの紹介であったそうです。テレーゼに恋したベートーヴェンは、意を決してプロポーズしましたが結ばれず、ベートーヴェンは生涯独身の道を歩むことになります。
ベートーヴェンは多くの音楽家の例に漏れず、恋多き男性であり、この時まで何度も身分上の問題で苦い経験をしてきていたと言われています。しかし、テレーゼと結ばれなかった理由は分かっていませんが、親子ほど離れた歳の差が原因だったのでしょうか。それとも上流階級のしきたりに合わなかったのでしょうか。想像は膨らむばかりです。
ただ、この曲のタイトル「エリーゼのために」は、実は「テレーゼのために」と書かれていたのを読み間違えたというのが現在の有力な説となっています。お相手であったテレーゼが持っていた自筆の楽譜をのちに誰かに送ったことからこの曲の存在が明らかになったこともあり、わたしたちがこの美しい名曲を聴けるのも、この数奇な運命のいたずらのおかげかもしれません。
そんな背景を思い浮かべながら、この曲の持つ繊細な調べを弾いてみてはいかがでしょうか。わたしの音楽教室の発表会においても、毎年この曲は弾かれていますが、大人になってからも弾き続けて欲しい曲の一つです。
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